ぶろん氏は語る

僕達は独りじゃない

回顧録

 

男女が2人で普通に話をしている様は気にならないのだけれど、腰に手を回しているだとか、女性の話をうんうんと本心ではそんなに興味が無いだろうに聞いている振りをしている男性を見るとどうにも困惑する。そういう類のことは二人きりの時間でするのが美徳であると信じて疑わない。

 

恋人と『陽だまりの彼女』を観た。始終何処かほんわかしたエフェクトの掛かった甘ったるい映画で、嫌いでは無いが好きという気持ちにもなれなかった。所々に散りばめられている非現実的過ぎる描写がそうさせたのかもしれない。私には現実はそんなに輝かしいものではないと捉えている部分がある。

 

慈しむように時間を紡ぐことを悪いことだとは思わない。それどころか、寧ろそれを人は目指すべきだとさえ思っている。

 

人は楽をしたがる生き物であるが故に多くのことを忘れるか消し去りたがる。私もそのうちの一人なので多くのことを忘れたし、今も何かを忘れている。養母が最期にくれた言葉も一字一句まではもう思い出せないし、実母から言われた罵りの言葉も出て来ない。恋人との電話の内容も、友人達と過ごした楽しかった日も、大半はもう忘れている。覚えているのは様々な事象を受け止めきれずに置き去りになった自分のことである。私は人と過ごしたたくさんの物事を忘れ、一人で過ごした時間だけを此処に積み重ねる。

 

覚えたくないことばかり覚えていて、忘れたくないことほど忘れてしまう、そんな身体など捨て置いて、私は意識の底に帰りたい。